1度治療した歯は、その詰め物の境目などからまた虫歯になりやすく、被せ物をしたとしても日本のデータでは平均8.9年で寿命を迎え、10年後にその被せ物が残っている確率は55.8%です。歯が1本なくなり、隣同士の歯を削って作るブリッジでは平均7年で寿命を迎え、10年後にそのブリッジが残っている確率は31.9%です。一生涯持つ人工材料はありません。
詰め物、かぶせ物の平均使用年数
修復物 | むし歯 | 脱落 | 歯髄炎 | 平均使用年数 |
---|---|---|---|---|
アマルガム充填 | 7.4 | 8.4 | 6.0 | 7.4 |
レジン充填 | 5.1 | 3.3 | 5.6 | 5.2 |
インレー | 5.8 | 4.1 | 5.3 | 5.4 |
鋳造クラウン | 8.2 | 6.2 | 8.9 | 7.1 |
ブリッジ | 10.1 | 6.2 | 7.5 | 8.0 |
ジャケット冠 | 6.4 | 5.0 | 4.0 | 5.9 |
継続歯 | 9.3 | 3.7 | ー | 5.8 |
平均使用年数にはこの他の原因(破折など)を含む 森田学ら 1995
つまり1度治療した歯は、「治療の繰り返しサイクル」に入ってしまい、いずれ歯を抜かなくてはいけません。
理想は「予防の繰り返しサイクル」です。一生涯自分の歯で過ごすことが理想です。
欧米では、予防の文化が根づき定期的にメインテナンスで歯科医院に通っている人が多くいます。
予防先進国のスウェーデンでは約90%、貧富の差が激しいアメリカでも約67%の方が歯科医院へ定期的に通っています。
日本は調査によりばらつきがあるものの、約2-14%の方しか定期的な歯のメンテナンスを行っていません。
そして、70歳になったときの残っている歯の本数の平均は日本では約8本、予防が根付いているスウェーデンやアメリカなどでは20本も残っています。
痛くなってから歯科医院に行く様な、従来の歯科医療ではむし歯や歯周病の進行を避けることができないのは明らかであると歯科で有名な海外論文でも結論づけられています。(Axelsson P and Lindhe,1981)
また、歯が多く残っているほど医科の医療費用も少ないというデータが出ています。
歯を失う原因の1位、2位は歯周病とむし歯です。つまり歯周病とむし歯を予防すれば、歯を失う可能性がかなり下がります。
そして、現代は、知識も研究も技術も発達し、歯周病とむし歯は予防できる時代です。言い換えれば「治すのではなく、治す必要のない環境を作ることができる」ということです。
*8020推進財団による調査(平成17年)